神風の伊勢の国にもあらましを

~~~神風の伊勢の国にもあらましを

なにしか来けむ 君もあらなくに~~~          (大伯皇女)              (万葉集巻第二の一六三)

(神風の吹く伊勢の国にいればよかったのに、どうして都に帰って来たのだろう。あなたもいないのに)

 

飛鳥時代後期、かけがえのない弟を亡くした大伯皇女が詠んだ歌です。

 

天武天皇の娘、大伯皇女は

「斎宮」として伊勢神宮に仕えていました。

天武天皇亡き後、次の天皇の位を争い

謀反の罪を着せられた大津皇子は

二十四歳の短い生涯を閉じました。

 

その後、持統天皇が即位し「斎宮」の職を解かれた大伯皇女は

大和に戻っても魂の抜け殻のように深い悲しみに暮れる寂しさを歌に込めて

大津皇子の眠る二上山を見つめながら幾度と涙を流した事でしょう。